2月12日(土)西尾記念ビルの竣工式が行われました。札幌聖ミカエル教会牧師の下澤先生にこの式を執り行っていただき、竣工の感謝と、今後もよい導きがあるよう祈っていただきました。
故西尾和美先生は、アメリカで心理学を学び、トラウマ治療の心理臨床家として長らくアメリカで実践を重ねておられました。日本でも心理ワークショップを年に数回開催していました。
2000年に、その西尾先生のリプロセス・リトリートワークショップに、当時むぎのこ園長だった北川が参加したことをきっかけに、お母さん達や子どものトラウマについての理解と実践を深めてきました。当時は日本ではトラウマの概念自体が一般的ではありませんでしたが、子どもの育ちと、お母さん達の育ちの関連性を直感した北川は、その後西尾先生が教授をされていたCSPPカリフォルニア臨床心理大学院日本校において3年間学び、その卒業後も西尾先生からはトラウマに対する効果的で実践的な考え方や技法を学んできました。
障害児の支援において、現在ではあたり前となっている「家族支援」「心理支援」という概念は、2000年当時は殆どありませんでした。心理臨床一般ではなく障害児支援の分野から、西尾和美先生に師事したというユニークな流れではありましたが、「西尾スピリット」と「むぎのこスピリット」が融合し、子育てや自分の生き方に困難を感じる多くのお母さん達が回復へと向かっています。
そのようなたくさんのお母さん達の回復の姿を感じた西尾先生が、今後もこのトラウマ臨床を継承して欲しい、その拠点となって欲しいとの思いから、麦の子会が西尾リプロセス研究所を運営することになり、麦の子会への多額のご寄付を頂きました。
そして2022年2月12日、ついに「西尾記念ビル」が完成しました。当初は西尾先生に縁の深い方達をご招待し、記念会を竣工式と同時に実施する予定でしたが、コロナの感染状況もあり今夏に延期しての実施を予定しています。
この建物には、1階にカウンセリングループが4部屋、プレイセラピールームが1部屋あり、個別カウンセリングや、グループカウンセリング、自助グループ、子どものセラピー、打合せなどに利用します。
2階は「ニシオ・キネン・ホール」で西尾先生に関連した書籍やグッズなどを常設し、リプロセス・リトリートワークショップはもちろん、様々な研修や学びの場として使用します。
3階は、妊娠SOS事業に利用します。妊娠SOS事業とは、思いがけない妊娠、事情のある妊娠を支援する事業で、麦の子会の事業所名は「にんしんSOSさっぽろ」です。事業の事務所と、妊娠SOS事業に伴う居所支援が必要な際の一時的な住居となっています。この3階部分については、建設費用と備品の費用として日本財団様からの助成も頂いています。
障害があってもなくても、どの子ども達にも幸せで豊かな人生を送ってもらいたい。そのために、子ども達のみならず家族の皆さんの生きづらさや困難にもしっかりと同伴し、深い支援を展開したい。そして、この「西尾記念ビル」がその拠点となり象徴となるよう、西尾先生のスピリットをいつも灯しながら、大切に利用させていただきたいと思います。